PHRとはPersonal Health Recordの略であり、米国診療情報管理学会は、PHRを次のように定義している。
「PHRとは、患者が保持する生涯に渡るカルテであり、患者の意思決定や医療の質向上に貢献するもので、医療機関だけでなく、個人からの情報を取得し管理するものである。また、PHRは、個人が主体的に用いるもので、アクセスの検討、管理も個人が行う。」
日本では、2011年5月に内閣官房が「どこでもMY病院構想」を発表した際にわが国で初めてその概念と方向性が整理されたが、本来の国際的なPHRの成立要件を満たしたものとは言えなかった※注1。
国際的に事業モデルとしては、支払者主導モデル、医療機関主導モデル、薬局主導モデル、企業主導モデル等が存在する※注2。
我が国でも患者からの情報を取得、管理等を行うPHRとしては、薬局が電子お薬手帳として取り組みを拡げ(アインお薬手帳、お薬手帳プラス他)、また企業主導でも様々な取り組みが始まっている(ライフパレットダイアベティス他)。
今後、より安価で使い易い通信やデバイス(スマートフォン、IoT他)の普及と標準化の推進等により、患者参加型医療のツールであるPHRは個人のエンパワメントのツールとしてより広く普及していくことが予想される。
また、類似した概念として、表1のようにEMR、EHR、Patient Portalがある。まずEMR(Electronic Medical Record)は現在使われている電子カルテの事であり、単独で1人の医師に使われるか、院内のみではあるが複数の医療者で共有される。
次にEHR(Electronic Health Record)はEMRが広域化して地域、或いは国家レベルで運用、共有されるものを指す。
EHRも基本的には医療者が中心的に利用することを想定している。
最後にPatient Portalは、PHRと患者が利用する点では類似するが、PHRを個人が主体的に管理するものであるのに対し、Patient Portalは、医療機関の情報やデータベースを個人がアクセス、閲覧するものであり、基本的には、医療機関、医師、医療者が主体となって管理するものを指す。※表1
以上
※注1)我が国におけるパーソナル・ヘルス・レコード(PHR)の定義に関するレビュー
※注2)糖尿病分野における PHR の課題と可能性:患者中心の医療を具現化するためのプラットフォーム型 PHR への再定義の試み
※表1)
Electronic Medical Record (EMR) | 院内電子カルテ |
---|---|
Electronic Health Record (EHR) | 広域電子カルテ |
Patient Portal | 電子カルテ情報を患者がアクセス、閲覧を可能にしたもの |
当社でもPHRに関する調査、企画あるいは開発等のご支援をしております。
ご興味がございましたら、お気軽にお問い合わせください。